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2005年度日本図学会賞選考結果報告
日本図学会賞選考委員会

受賞者:正会員 面出 和子氏
業績:「絵画空間の図学的分析とその図学教育への応用」
業績概要:
 面出和子氏は,永年にわたり,大学において図学,造形デザイン教育に携わってきた.この教育経験ならびに研究活動を基に,数多くの著作,研究論文を著し,その中で「絵画空間の図学的分析とその図学教育への応用を考究し,その成果が図学教育全体にとって極めて重要であることを提示してきた.
 氏は3次元の形や空間を2次元の平面上に変換するシステムとして,図学(図形科学)的な方法の様々な可能性を研究してきた.中でも対象を客観的に捉える手段のひとつとして図学的方法の有効性に着目した.芸術分野では,とかく主観的・感覚的に制作したり批評したりしがちであるが,図学的方法を軸に捉えなおすことで対象を客観視して抽象化する過程を経て具象化するプロセスを明らかにしようとしたのである.具体的には,時代や洋の東西を問わず絵画作品を扱い,絵巻の中の時空間がどのように表現されているか,また絵画の陰影がどのように描かれているかを,図学的方法を手がかりに分析して,その制作プロセスを解明すると同時にその背景となる文化との関わりを考究しかつ明らかに示してきた.
 これらの一連の研究において, 3次元形状・空間とその表現である2次元図形の関係の在り方の多様牲と重要性を指摘するとともに図学教育が造形デザイン分野で大切であることを示した.また教育現場で実施した成果を発表し,その教育効果が高まることを幾つかの試みを通して明らかにした.
 これらの絵画空間の図学的分析の研究成果を図学研究や図学会大会・国際会議等で発表することにより,図学ならびに図学教育の発展について多大な寄与を果たしたものである.その業績は本学会賞受賞に相当するものと認められる.