日本図学会 > 日本図学会賞 > 幾何学から発想される立体造形の研究

2012年度日本図学会賞選考結果報告
日本図学会賞選考委員会

 2012年度日本図学会賞について,本学会正会員より候補者の推薦がありました.これを受けて委員会では日本図学会賞規 程・同内規に基づき推薦内容について慎重に審議し,候補者を 決定し,総会において以下の受賞者が承認されました.
 
受賞者:正会員 村松俊夫氏(山梨大学)
業績:「幾何学から発想される立体造形の研究」
業績概要:
 村松俊夫は、山梨大学人間科学部において、ほぼ東京芸術大学大学院を修了して以来、30年にわたって、一貫して幾何学から発想される立体造形を制作・発表、そしてそれらの造形についての理論的な解説をされてきた。自身は、「幾何学の秩序ある整然とした美しさと、図学的操作が生み出す思いがけない性質に注目し、これを発想の原点として制作活動をしているひとりである。現在の自分自身をかぇりみても、研究の対攻としては常に『形態生成のための方法論』、すなわち自己の作品の制作手段として図学をとらえているといえよう」(「美術・造形のための図学」図学研究30周年記念号,1997,pp. 116)と幾何学もしくは図学との関わりを述べている。初期のころは、立体の切断に関わる作品群があるが、近年はスフェリコンの構造を用いたダイナミックなオブジェを制作し、それらの制作の理論を発表している。これら一連の研究は、科学研究補助金も得ており、教育遊具の開発として位置づけられている。遊具としては、まだ問題点も残しており、これからを期待するところではあるが、実際に制作された形態は、この幾何学的な遊具で遊んだ子どもたちが、それに触発されて図学的な領域に興味をもってくれれば、たいへんうれしいことである。
 氏の制作されたオブジェは、たいへん美しく,図学を発想の原点として、図学が単に机上の研究にとどまらず、ものづくりに活かしていることが高く評価できるものである。
 その業績は日本図学会賞受賞に相当するものと認められる。