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日本図学会第11回デジタルモデリングコンテスト

第11回デジタルモデリングコンテスト実施報告


実行副委員長       
西井美佐子 Misako Nishii

2019年11月23日,24日に開催された「日本図学会秋季大会」に併せて,第11回デジタルモデリングコンテストを実施した.コンテスト受賞作品を掲載する.
 

審査基準   

コンテストは,機構を持つ立体構造の考察,立体的な発想を喚起することを目的し,以下のような審査基準を設けている.
  • 発想やモデル製作を考慮した3次元データ構築及びデータの造形力を総合力で評価します.
  • これまでの切削技術や一体成型では製作することが困難だった複雑な機構や幾何学的図形を実体化するなど3Dプリンタを利用することによって実現が可能になった立体構造の新規性を評価します.
  • 教育・資料用作品は,図学,造形,設計といった教育分野で,教材として効果的利用法が見える3D立体モデルを評価します.
 

コンテスト審査

審査で,得点によって表彰対象数に対して判断が分かれたため,審査基準の他に,審査員の意見をもとに以下の基準を今回設けた.
最優秀賞:原則1件
  • 最も評点が高い
  • 目安として,過半数の委員が点数を入れている
優秀賞:原則1件
  • 次点
  • 目安として,過半数の委員が点数を入れている
審査員特別賞:若干数
  • 次点より評点は少ないが評価すべき点がある
  • 優秀賞と点数が大きく離れていないこと
  • 複数の審査員が評点を付けていること
  • 積極的に評価できるポイントがあり(最高点を付けている審査員が居り),コンテストの趣旨に沿った説得性のある理由があること

審査結果


受賞一覧
最優秀賞 和菓子の型 ―アルゴリズムを利用した和菓子の多様なデザイン提案―  江口 淑子(京都女子大学)
優 秀 賞 Automatic Generation of a Cityscape: Shibuya, Tokyo 安藤 直見(法政大学)
優 秀 賞 Barnacle shape vase
―フジツボの形状を用いたフラワーアレンジメントを容易にする花器―
羽太 広海(近畿大学)
審査員特別賞 彫刻造型教材「セミ:高村高太郎オマージュ」の3Dデジタルモデリングモデル
―木彫木取り法の学習の意義―
福江 良純(北海道教育大学)
山田 修 (東京藝術大学)
 
最優秀賞
 

審査員のコメント

  • 植物をテーマにした和菓子はよくあるが,さらに数式により展開しての奥行きの深さを増した新たな和菓子つくりの可能性が見えてくる.三次元造形により自ら型を試作することにより和菓子の世界の豊かな広がりが期待できる.
  • デジタル技術の融合や3Dプリンターを使用することが,伝統文化や伝統工芸に対して有効・有益であると思わせる作品であった
  • 日本の伝統的な意匠を,アルゴリズムを用いてデータ構築している点が優れている.また,その形状を伝統的な和菓子に転写させる発想が新しい。
  • 美しくまとまりが感じられる.実物を制作することに多くの時間が費やされているが,もう少し簡単な方法があるということを提案した.
  • 洋菓子におけるDinara Kasko氏のように計算によりデザインすることで,新しい和菓子の世界が広がることを期待させます.
  • 作ってみた,というだけで心を感じられなかった.
優秀賞
 

審査員のコメント

  • コンパクトにその街の気配を感じさせる点が興味深かった.
  • 都市の中心部の立体構成の三次元モデルの製作はその用途の幅が広く有用性が高いと考え推薦する.
  • 統計結果と3Dデータを連携させてデータ構築をする発想が新しい.また,造形されたモデルが,都市の分析にも利用できる点が優れている.
  • 立体構成としての面白さがある.
  • 計算による作る街並みという視点が面白い.
  • 3D造形モデルによって都市中心部の立体構成を見える化することができ,立体構成の特徴が理解できる.
  • 単なる立体地図ではなく,インフォグラフィック的な作品であるところに新規性を感じる.
優秀賞
 

審査員のコメント

  • 当初設計したものを花器(=花と一緒)としての最適性を求めて変形しているところがよい.
  • プロテトタイプ制作(?)花器のデザインの提案としては良いと思う.
  • 3D CADを活用して作成した造形デザインを,実用的な花器として落とし込んでいる点が優れている.
  • 造形的に興味深い形の非常にユニークな作品である.形状操作の方法もわかりやすく,花器としての新しい提案となっている.
  • 着眼点が面白い.
  • フジツボをモチーフとするユニークな作品である.
  • 花器という身近なアイテムを採用している点,デザイン検討で3Dプリンタを活用する具体的事例作品として,評価できる作品である.年齢問わず扱える教材の有用性も感じられる.
審査員特別賞
 

審査員のコメント

  • 数が必要な教育用教材に3Dプリンタを用いるという取り組みがよい.
  • 三次元デジタルデータを基にした彫刻造型用教材としての活用に共感した.デジタルモデリングコンテストセッションの際の説明を聞くことによって教材としての素晴らしさが見え,教材としての有効性にあわせ芸術表現上の問題点もこの中で指導できることをモデルを通して実感し,ここで作られたセミの彫刻造型教材としての教育用三次元モデルとして選ばせてもらった.これを用いてどのように指導するかがポイントでここが見えてはじめてこのモデルの価値が評価できる.この実践結果の評価を踏まえての応募であることが素晴らしい.
  • 高村氏の《セミ》を同様にスキャンして本物と比較することにより,新たな知見が得られるのではないか.