日本図学会 > 図学教育研究会 > 図学教育のための模型の活用

図学教育のための模型の活用

第30回図学教育研究会のご案内

日 時
  2002年12月1日(日)09:00-13:00
 
場 所
  静雲荘 (文科省共済宿泊所)
〒250-0408 神奈川県足柄下郡箱根町強羅 1320
Tel: 0460-2-3591
 
交 通
  箱根登山鉄道終点強羅駅下車,徒歩5分
乗り継ぎ検索はこちらから。
 
テーマ
  図学教育の充実のために、図学教材の交流が必要と考えています。特に若手の教員が、経験豊富な教員の教育手法を学ぶことは貴重なことです。この研究会では、図学教育にさまざまな模型や展開図の活用にしぼって、教育へどのように応用しているか、さらには今後どのようにどのような教育に応用すればよいかを討論します。模型というと形状モデリングもデジタルの模型といえますが、今回は実体のあるものを中心に考えています。以下のように多数の方からの講義における模型の活用例を発表していただきます。
 
プログラム
 
9:00- 本研究会主旨について 近藤邦雄
9:10-9:40 セッション1: 展開図ソフトウエアと模型製作

(1) 計算機による展開図の作成とその応用
三谷 純 鈴木 宏正 東京大学工学系研究科精密機械工学専攻
宇野 弘 エービーネット株式会社

発表概要:
筆者らは、特に紙で3次元形状を作成するペーパークラフトに主眼を置き、ポリゴンモデルから展開図を自動的に作成するプログラム、および計算機によって折り紙建築の展開図を容易に設計できるプログラムなどを開発してきた。数年前からこれらのプログラムを一般公開することで、ホビーとしての使用をはじめ、教育の現場、および産業の場も含め、実際に多くの方々に使用してもらってきた。今回は、これらのプログラムと実際に作成された作品群、および現場での活用例の紹介を交え、今後の教育現場で使用することの可能性について展望を述べる。
9:45-10:45 セッション2: 図学教育支援のための模型の使用

(2) 模型を用いた図学教育
西原一嘉、大西道一、西原小百合(大阪電気通信大学)

発表概要:
図学教育活性化のためには図学を興味のあるものにする工夫が大切であり、また、図学が役にたつものであることを示す例を出来るだけ集める必要があるとの 2つの観点から、図学の教育法について種々の試みを行ってきた。ここでは第一の観点である図学教育の刷新について、学生の興味を引き、学生が容 易に理解でき、また教える方も教え易い分かりやすい授業、初心の先生もすぐ教え られるような授業としてプラスチック模型、あるいは紙の模型を工夫した模型図学 といったものを提案したい。内容は図学の全範囲に及ぶが、特に初心の学生が特に 理解しにくい立体と3面図との対応、副投影図法、回転法、切断や相貫における補助 平面法、展開図法、単面投影における軸測投影、透視投影の説明に用いている図学 模型の作成法、使用法について述べる。


(3) 教科書の説明図に対応した模型による初心者の図学教育
大西道一 関西大学

発表概要:
図学の理解には立体図、見取図、説明図などで表現されている立体図形が必要である。立体図形には立体構造を理解させるためにあるが、複雑な構造になると立体図形そのものを読み解くことも困難になる。特に図形に慣れていない初心者では立体図形の読み方にも訓練が必要となる。この場合立体図形に対応する実際の立体模型を手にして目の前で回しながら必要な方向から観察すると理解が早く、立体図形の意図するところを逆に理解でき、立体図形の見方も会得することができる。この意味で立体模型による図学教育は初心者にとって特に有効である。実際に教育に使用した立体模型の実例を紹介し、またアンケートに表れた受講生の反響も紹介する。


(4) 図形科学講義における各種実物模型の使用
鈴木賢次郎 東京大学教養学部

発表概要:
図形科学においては、立体図形の図的表現法、および、図を用いた立体図形の解析法について学ぶ。学習の過程において、2次元の図から3次元の立体形状を理解する必要があるが、これは初学者にとって必ずしも容易なことではない。また、図形科学における学習内容は機械・建築設計等において立体形状を取り扱う際の基礎となるものであるが、図形科学を学習する際、これが設計等にどのように役立つかを理解するのも、また、容易ではない。これらを理解させることを主たる目的として、筆者はできるだけ多くの実物模型を使うことにしている。本報告では、東京大学教養学部における図形科学講義における模型使用の概要について述べる。
10:50-11:30 セッション3: 模型製作演習の導入

(5) スチレンボードによる実体モデルの図学教育への導入
−国立大学および私立大学での事例紹介を中心に−
長江 貞彦 近畿大学生物理工学部電子システム情報工学科

発表概要:
図学は3次元空間の物体を平面や立体幾何学などの助けをかりて、その定性的・定量的関係を考察し、2次元空間に表示する学問である。しかし、思考の過程で直接実物体を確認し難い点で学生を悩ませる場合も多い。そこで筆者は授業中にスチレンボードを切断・組み立てなどして、実体モデルを製作させ、図面の結果を確かめさす方法を採用している。学生への負荷も多いが、満足度も大きく、効果的であることを確認した。いまのところ多面体、相貫体モデルおよび家屋モデルであるが学生の意欲によっては任意の創作モデル製作も指導し完成させている。今回はそれらの事例を中心に図学教育の一つのあり方を披露していく。


(6)モデリング的実践を通しての製図教育
荒木勉 筑波技術短期大学機械工学科

発表概要:
機械設計製図、CAD演習等の製図課題において、その図面の形状と実際の形状とが結び付くかどうかペーパーモデルを作らせ、確認を図っている。内容的には非常に基礎的なものではあるが、指導している学生の資質を考えると重要な内容で、製図への興味を引出し形状理解の手助けになるよう図っている。また、紙飛行機の作成やペーパーカーの製作を通して、形を作る事によって設計の条件を踏まえ、目的に合った取り組みができたか自己判断のできる課題として出題したり、手巻きウィンチの設計で部品の一部の作成による図面の良否を考えさせような、学生自ら考えることができ、最適化の図れる取り組みとして行っている。
11:30-11:45 休憩
11:45- 12:15 セッション4: 模型の活用による教育内容の改善

(7)女子美術大学における図学の課題
斎藤 綾、面出和子 女子美術大学

発表概要:
芸術デザイン系の学生にとっては、各学生のオリジナリティが発揮できることが、科目に興味を持たせるポイントである。図学の授業ではいくつかの応用的な課題があるが、中でも学生の反応がよい「円錐の展開図」を紹介する。ここでは円錐の平面図に描かれた図(絵)が展開図でどのよう作図され、組み立てられるかを問題にしている。


(8)東京大学の図学関連科目「図形科学実習」における模型製作課題の導入
加藤道夫 東京大学

発表概要:
加藤は、東京大学における図学関連科目「図形科学実習」において模型製作課題を導入してきた。ここでは、その内容を以下の観点から紹介する。 a)課題の狙い、b)課題内容、c)問題点、d)今後の展望


(9)ワイヤフレームおよびサーフェス模型の製作と図学演習
近藤邦雄 埼玉大学

発表概要:
「ねじりっこ」という荷作り用の針金をワイヤフレームとして多面体を製作した内容とその活用、および、プラスチック板をサーフェスとして多面体を製作した内容とそれらを組み合わせた建造物の製作、そしてそれらの写真を下図とした透視図の作図への応用に関する演習について紹介する。
12:15-13:15 全体討論 (司会:近藤)

模型の種類、模型の製作方法、教育における模型利用法とその有用性、模型の共同利用に関して、発表者と参加者から意見を出し合って整理する。