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日本図学会第9回デジタルモデリングコンテスト

第9回デジタルモデリングコンテスト実施報告


第9回デジタルモデリングコンテスト実行委員長
西井美佐子 Misako Nishii

2015年11月28日,29日に開催された「日本図学会秋季大会」に併せて,第9回デジタルモデリングコンテストを実施した.経緯及びコンテスト審査結果を報告する.
 

開催の目的

コンテストの目的は,機構を持つ立体的構造の考察や立体的な発想による立体形状の製作について付加製造装置を用いた製作支援,作品発表の場を提供,コンピュータを用いたデジタルモデリング技術の普及である.コンピュータを用いたデジタルモデリング技術や設計技術,造形技術の振興と普及を図る取組みとして,付加製造装置(3Dプリンタ)を利用して3次元データを実体化し,大会にて展示する.
また,日本図学会ホームページに作品の意図やモデリング工程の概要含め作品を閲覧できるように公開する.
 
募集資格及び対象
個人および団体(会員及び一般参加も応募可)が応募資格である.
応募作品の対象は,ジャンル不問.テーマ自由.
造形デザイン,サイエンスアート(数理造形),機構を有する造形,建築デザイン,工業デザイン,デジタルアート,ファッション等.
 

コンテスト審査

「造 形部門」は,発想力や付加製造装置(3Dプリンタ)を用いて造形することを踏まえて造形検証されているデータ構築力の総合力を評価する.併せて,これまで の切削技術や一体成型では製作することが困難だった複雑な機構や幾何学的図形を実体化するなど,3Dプリンタを利用することによって実現が可能になった立 体構造の新規性を評価した.
「アイデア部門」は,実体化が可能な形状をスケッチや投影図で表現されている且つ立体的な発想を喚起させる立体構造の新規性,構想力を評価した.
 

作品の応募期間

2015年6月1日〜2015年10月15日
造形部門で7件,アイデア部門で2件の応募があった.

審査結果

今年度の造形部門及びアイデア部門受賞者と作品を以下に示す.
造形部門は,最優秀賞1件,優秀賞3件,入選該当なし.アイデア部門は,最優秀賞該当なし,優秀賞1件,入選該当なしであった.
 
造形部門 入賞・入選一覧表
最優秀賞 アポロニアン・フィッシュ  スナダ セイジ
優 秀 賞 十分杯 株式会社ミスミ
FC部活
優 秀 賞 キヌガサタケの網目構造のモデリング 高橋 優輔
優 秀 賞 転がる/転がらない20面体 松浦 昭洋
大橋 拓海
 
アイデア部門 入賞・入選一覧表
優秀賞 多面体極小曲面 對馬 尚
 



 

 

審査員のコメント

  • 幾何学的要素と相まって完成形が美しい.作成時に最細部にはおそらく注意が必要
  • アポロニアン・ガスケットによる造形美と,構造の複雑さが3Dプリンタに向く
  • 作品の完成度が群を抜いている
  • 美しさを兼ね備えて、数理を造形した点が評価できる
  • レースのような造形が美しい
  • 形状が複雑でCADならではある
  • アルゴリズミックに作られている形状が面白い
  • 美しい点は評価できるが,なぜこの形にこの数理を使うのか疑問が残る

 


審査員のコメント

  • 生成過程が有益であり,発想から形までの過程として評価できる
  • 3Dプリンタでの造形に相応しい作品
  • 研究の成果としての形の再現に意味がある
  • アルゴリズミックにつくられている形状が興味深い
  • 形状の新規性はやや乏しいが,生成過程は有益である
  • アルゴリズミックに作られている形状が面白い
  • 美しい点は評価できるが,なぜこの形にこの数理を使うのか疑問が残る

 


審査員のコメント

  • サイフォンの造形は面白い.透明度を与えてどの程度効果が表れるかは不明
  • シンプルながら多層構造が3Dプリンタに向く
  • 3Dプリンタでの造形に相応しい作品
  • 実際に形にすると面白そうな題材

 

 

審査員のコメント

  • 僅かな変形によって,転がりを作り出している点がよい
  • もっと重量のある素材の方が良いと思われるが,面白い試みである
  • 問題検証のための加工・製作が速い点では有効利用だと思う


審査員のコメント

  • 構造が面白い
  • 幾何学的である
  • 繊密な形状が生成できるかどうか関心がもたれる,ベンチマーク的な形状なのか
  • 美しい形状,仕上がりを見てみたい
  • 形状は美しいが,今日の技術でどこまで繊細に表現できるのか関心がもたれる
  • 図学会らしい幾何学をテーマにした作品である
  • アルゴリズミックに生成された形の面白さと3Dプリンタのベンチマーク的な形状
  • レースのような造形が美しい
  • 美しい点は評価できるが,なぜこの形にこの数理を使うのか疑問が残る
 
 

まとめ

今年度の応募作品は,アルゴリズミック且つ繊細な作品の応募が目立った.3Dプリンタで出力を試したうえで応募された作品であっても,3Dプリンタが変わると要求される精度が変ることから,提出されたSTLデータのままでは出力が不可能な作品データもあり,データの最適化に向けてポリゴンの大がかりな修正作業が必要となる.このようなケースでは,作者に要因とどのように修正するかの大筋の作業手順例を報告している.
こちらは昨年とは異なる新たなデジタルモデリングの課題ではあるが,昨年同様に「コンピュータを用いたデジタルモデリング技術の普及」の促進を図るために,より充実した資料の整備や情報提供が必要であることを再認識した.デジタルモデリングコンテスト開催当初に比べて3Dプリンタが普及していることから,これまでの活動で蓄積した技術情報を公開できるように,徐々にでも整備することが必要と思われる.

謝辞

3Dプリンタでの出力に関しては,株式会社アルテックおよび株式会社ストラタシス・ジャパンより,技術面と作品提供の両面にわたって多大な協力をいただいた.
埼玉県産業技術総合センターには,作品データの評価とデータの最終調整に関して協力をいただいた.また,X線CTスキャナで取得したデータからモデルを製作する技術に関する資料(バラ,ガーベラ,ミヤマクワガタの造形品など)を拝借し展示した.
当該コンテストの実施にあたってご協力いただいた企業や会員に対し、厚くお礼申しあげる.



各作品出力で使用したプリンタの種類及び作業時間と樹脂(造形用樹脂,サポート材)の使用量
作品名 プリンタ名 材料 樹脂
使用量
(g)
サポート
使用量(g)
造形時間
(時間)
サポート
種類
サポート
除去時間
アポロニアン・フィッシュ Eden260VS VeroClear 323.0 869.0 21.0 水溶性 18時間
十分杯 OBJET260
CONNEX
VeroClear 140.0 195.0 4.14 寒天状 20分
キヌガサタケの網目構造のモデリング Eden260VS VeroClear 136.0 390.0 9.1 水溶性 15時間
転がる/転がらない20面体 I0 Eden260VS VeroClear 90.0 40.0 3.21 水溶性 5時間
転がる/転がらない20面体 I1 Eden260VS VeroWhite 94.0 44.0 3.34 水溶性 5時間
転がる/転がらない20面体 I2 Eden260VS VeroWhite 97.0 44.0 3.37 水溶性 5時間
転がる/転がらない20面体 I3 Eden260VS VeroWhite 102.0 46.0 3.45 水溶性 5時間
情報提供 株式会社アルテック